AE-ATmegaのあれこれ(その1)

秋月キットのATmega168/328マイコンボードキット AE-ATmegaを組み立てていて疑問に思っていたことを調べたのでまとめておきます。

参照する回路図は2014/03/21現在のものです。
キットの組み立て説明書にある回路図と、基板単体の回路図は同じようです。基板単体のページにある回路図の方が大きいので、そちらがお薦めです。

(1)回路図の誤り

誤りといっても些細なものですが。

(A)電源LED回路が無い。
基板シルク印刷にあるLED「PWR」と抵抗「R5」がありません。

(B)IC1の2,3ピンの信号線に信号名が無い。
信号名が無いのでX4の3,1ピンのM8RXD,M8TXDと接続しているように見えない。
もちろん実際には接続されています。

(2)ジャンパ・コネクタX3の使い道

通常は何も接続しません。

(A)BitBang方でCPUにプログラムする。
このときX4のジャンパはすべて(あるいは少なくとも5-6だけ)ジャンパを外しておいた方が良いでしょう。U1のDTR信号が変化するとICSPからのRESET信号を邪魔します。たぶん問題ないと思いますが念のため。

(B)シリアル制御線コントロール
シリアルの制御線まで含めてコントロールしたいとき、適当なIOピンに接続します。どのように利用するかはRS232C等について勉強ください。

(3)ジャンパ・コネクタX4の使い道

CPUからシリアルを使うなら、1-2,3-4,5-6の組み合わせでジャンパを差せばOKです。Arduinoとして使用し、スケッチを描き込むなら、これは必須です。
逆にジャンパを差さないのは、(a)シリアルを使用しない、(b)IC1の2,3ピンをIOとして使う、(c)シリアルのDTRからRESETを入れない(Arduino等の自動リセット禁止)、のような場合です。
また以下のような使い方もあります。

(A)単なるUSB-シリアル変換器として使用
X4の2,4ピン、それとGNCからジャンパを別ボードへ飛ばします。
Arduino MEGA2560のSerial1,2,3等に便利かも。

(4)コネクタICSPの使い道

通常は何も接続しません。
使用するのは、BitBang方によるプログラム、外部プログラマ/デバッガのケーブルを接続するときです。
ICSPの目的と異なる使い道としては、(a)第2の+5V端子、(b)SPI専用コネクタ、(c)リセット回路の付加などでしょうか。
ブレッドボードを使わずに、ユニバーサルでちょっと拡張するとき、2.54mmピッチ・ヘッダ・ピンというのは使いやすいかと思います。

(5)ジャンパ・コネクタSELと、U1のJ1,J2の使い方

J1,J2の使い方はFT232RL USBシリアル変換モジュールの取扱い説明書にあります。SELも含めたそれぞれの設定は以下の通りです。

ジャンパ名ジャンパ設定説明
J11-2をshortI/O電圧3.3[V]
2-3をshortI/O電圧5[V]
AE-ATmegaなら常にこちらを選択
J2openVCC(つまりDCジャックの5V)から給電
shortAE-UM232RのCN1のVBAS(つまりUSB電源)から給電
SEL1-2をshortAE-UM232Rモジュール(USB-5V)から給電
2-3をshortDCジャック(IC2の出力)から給電

J1は2-3をshortで決まりです。1-2をshortするのは、レギュレータICを変更して、3.3V電源化するときくらいでしょう。
ちなみにAE-UM232Rの初期設定ジャンパ(製品ページの写真と同じ)は1-2をショートしてあるので、そのままでは誤りです。実際には3.3V IOでもCMOSレベル出力されるので、問題なく動作するかもしれませんが、危険は避けるべきです。
一方、電源供給の仕方に着目して、その他についてまとめ直しました。

電源供給方法ジャンパJ2ジャンパSEL備考
USBコネクタshortすべてopenSELの1-2をshortしないのは、AE-UM232RのFB1とC1によるノイズ・フィルタが弱くなるため。(6)参照。
DCジャックopen2-3をshort

「J2をshort」と「SELの2-3をshort」の組み合わせは禁止です。USB電源とDCジャック電源が短絡します。一方のコネクタを差し込んだとき、もう一方の電源は0Vですから...

当然ですが、これらジャンパを切り替えるときは電源が入っていない状態で実施します。組み立て説明書では、拡張基板がU1に干渉する場合、ジャンパ・ピンを切って、半田を盛ってジャンパさせるように指示がありますが、そうすると簡単に電源供給を切り替えられないことになります。

(6)USB電源給電時のループ

USB給電するためにJ2をshort、SELの1-2をshortすると、電源ラインがループします。

f:id:PeripheralPinMap:20140322154718p:plain
f:id:PeripheralPinMap:20140322143653p:plain

AE-UM232RのVCC端子を経由する電源ライン(AE-ATmegaの+5V)と、USB端子を経由する電源ライン(AE-ATmegaのUSB-5V)があり、SELの1-2をshortすることでUSB-5Vが+5Vと接続してループが出来上がります。
結果として、ノイズ・フィルタ(AE-UM232RのFB1とC1)が効きにくくなり、USB-5Vラインを通ってノイズが拡散します。
J2をopenで使用しても、ノイズ・フィルタが無効になり、FT232RLの電源ラインが長くなるだけで、改善とは言い切れません。
根本的な原因は、ノイズの乗りやすいAE-UM232RのUSB端子から電源を引いていることです。多少のノイズくらいでは動作に影響ありませんが、好ましい回路でもありません。
簡単な対処方法は、J2をshortして、SELにジャンパを差さないことです(すべてopen)。USB電源は必ずノイズ・フィルタを通りますし、AE-UM232RのVCC端子は+5Vに接続されるのでボード本体に電源供給されます。